片側顔面痙攣
(へんそくがんめんけいれん)

片側顔面痙攣とは

片側顔面痙攣とは片側顔面痙攣とは、顔の片側の筋肉が自分の意思とは関係なくピクピクとけいれんする状態を指します。
はじめは目の周りがピクピクする程度ですが、次第に口元や頬、あごなどへ広がっていくことがあります。
多くの場合、症状は片側だけに現れ、睡眠中には治まるのが特徴です。
命に関わる疾患ではありませんが、けいれんが続くと表情が歪んだり、日常生活や人前での会話に支障をきたすこともあります。
女性にやや多く、40代以降で発症するケースが多く見られます。
早期に原因を突き止め、適切な治療を受けることが大切です。

片側顔面痙攣の原因

最も多い原因は、顔の神経(顔面神経)が脳の血管に圧迫されることです。
脳の奥で血管が神経に触れることで、電気的な刺激が伝わりやすくなり、神経が過敏な状態になります。
その結果、顔の筋肉が不随意に収縮してピクピクと動いてしまうのです。

主な原因としては以下が挙げられます。

  • 脳の血管が加齢や動脈硬化で蛇行し、神経を圧迫している
  • 脳腫瘍や血管奇形などが神経を圧迫している(まれ)
  • 顔面神経麻痺の回復過程で神経の再連結が不完全な場合
  • ストレスや疲労による一時的な神経の興奮(軽度なケース)

根本的な原因が「神経への圧迫」であることが多いため、薬で一時的に抑えるだけでなく、原因を確認して対処することが重要です。

片側顔面痙攣の症状

症状はゆっくりと進行することが多く、初期は「片目がピクピクする」といった軽い違和感から始まります。
進行に伴い、次のような症状が現れます。

  • まぶたが自分の意思と関係なく閉じる
  • 頬や口元が引きつるように動く
  • 話すときに口角が上がりにくい
  • 顔が引きつって表情が不自然になる
  • 長時間けいれんすると、首筋まで動くことがある

初期は数秒〜数分の間隔でけいれんが起こりますが、悪化するとほぼ一日中続くこともあります。
人前での緊張や疲れ、ストレスなどが症状を強めることもあり、精神的な負担につながることも少なくありません。

片側顔面痙攣の早期発見のために

「目の周りがぴくぴくするだけだから」と放置されがちですが、初期症状の段階で診察を受けることが大切です。
まぶたのけいれん(眼瞼ミオキミア)やチック症など、似た症状の別の疾患もあるため、自己判断は避けましょう。
以下のような場合は早めに受診をおすすめします。

  • 数週間以上、同じ場所が繰り返しけいれんしている
  • けいれんが目から口の方へ広がってきた
  • 会話や食事中に表情が歪む
  • けいれんが止まらず、仕事や人前で困ることが増えた

MRIなどの画像検査で血管と神経の位置関係を調べることで、原因を明確にすることができます。

片側顔面痙攣の検査・診断

診断の基本は、神経の圧迫の有無を画像で確認することです。

MRI検査(脳神経の断面撮影)

顔面神経の走行や血管との接触部位を詳しく確認します。

MRA検査(脳血管の撮影)

神経を圧迫している血管の形や位置を調べます。

まれに、脳腫瘍や血管奇形などが原因で神経が圧迫されている場合もあるため、正確な画像診断が治療方針を決める鍵となります。

片側顔面痙攣の治療・予防

片側顔面痙攣の治療は、症状の程度や原因によって選択されます。

薬物療法

軽度のけいれんに対しては、筋肉の興奮を抑える薬や神経の過敏性を抑える薬を使用します。
一時的な改善は期待できますが、根本的な解決には至らない場合が多いです。

ボツリヌス毒素(ボトックス)注射

最も一般的な治療法で、けいれんしている筋肉に注射して一時的に収縮を抑える方法です。
効果は3〜4か月ほど持続し、定期的に注射を繰り返すことで症状をコントロールできます。
日常生活への支障を軽減できる、安全性の高い治療法として広く行われています。

外科的治療(微小血管減圧術:MVD)

根本的な治療を目指す場合、神経を圧迫している血管を離す手術(微小血管減圧術)が検討されます。
頭部の小さな部分を開けて、血管と神経の間に人工物(テフロンなど)を挟み、直接の接触を防ぐ方法です。
再発率が低く、長期的に症状を改善できる唯一の根治的治療とされています。
手術は全身麻酔で行われるため、体調や年齢、合併症の有無などを考慮して慎重に判断します。

生活上の注意・再発予防

片側顔面痙攣は、ストレスや疲労、睡眠不足などで症状が悪化することがあります。
次のような生活改善も、再発予防に役立ちます。

生活上の注意・再発予防

  • 十分な睡眠と休養をとる
  • コーヒーやアルコールの過剰摂取を控える
  • ストレスをためず、リラックスできる時間を設ける
  • 眼精疲労や首のこりを感じたら早めにケアする

また、「顔の動きに違和感がある」段階での早期治療が、症状の進行を防ぐうえで非常に重要です。

よくある質問(Q&A)

顔の痙攣(けいれん)はどの科を受診すればよいですか?

顔のけいれんが続く場合は、脳神経外科または神経内科の受診がおすすめです。
多くの方は最初に「目のけいれんだから眼科に行こう」と考えますが、原因の多くは脳の血管と顔面神経の圧迫によるものです。
眼科では異常が見つからないケースも多く、神経や血管の状態を詳しく調べるMRI検査が可能な脳神経外科での診察が適しています。

片側顔面痙攣は放置してもいいですか?

一見軽い症状に思えても、放置すると進行して顔全体に広がる可能性があります。
初期はまぶたのピクピク程度でも、次第に口元や頬、あごまでけいれんが及ぶことがあります。
また、まれに脳血管の異常や腫瘍が関係していることもあるため、「自然に治るだろう」と自己判断せず、早めに検査を受けることが大切です。
早期に原因を特定できれば、症状の悪化を防ぎ、治療の選択肢も広がります。

左顔だけピクピクするのは何が原因ですか?

左右どちらか一方の顔だけにけいれんが起こる場合、顔面神経を圧迫する血管の位置や走行の違いが関係していることが多いです。
たとえば左側の血管が神経に近い位置を通っていると、神経への刺激が起こりやすくなります。
その結果、左側だけにけいれんが集中して起こることがあります。
まれに脳腫瘍や血管奇形などの構造的な異常が左側に存在することもあるため、MRI検査による確認が安心です。

ほっぺが片方だけ痙攣するのはなぜですか?

頬の一部がピクピクする場合、顔面神経の枝の一部が血管や筋肉に刺激されていることが考えられます。
長時間のデスクワークやスマートフォン操作などで首や肩の筋肉がこると、神経の興奮が伝わりやすくなることもあります。
また、ストレスや睡眠不足で自律神経のバランスが乱れると、けいれんが強まることもあります。
一時的な症状であれば休息で落ち着くこともありますが、数日以上続く場合は神経の圧迫や慢性的な刺激が原因の可能性があるため、専門医の受診をおすすめします。

片側顔面痙攣の手術の後遺症は?

微小血管減圧術(MVD)は、根本的な治療が期待できる反面、頭部の神経を扱う繊細な手術です。
後遺症としては一時的な顔面神経麻痺(口角が上がりにくい・まぶたが閉じにくい)や、耳鳴り・聴力低下が起こることがあります。
ただし、これらは多くの場合数週間〜数か月で回復し、永続的な障害となることはまれです。
経験豊富な脳神経外科医が顕微鏡下で慎重に行うことで、リスクを最小限に抑えることができます。

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