もやもや病(ウィリス動脈輪閉塞症)

もやもや病(ウィリス動脈輪閉塞症)とは

もやもや病(ウィリス動脈輪閉塞症)とはもやもや病は、脳の血管の一部が徐々に細くなり、脳への血流が不足する疾患です。正式名称は「ウィリス動脈輪閉塞症」といいます。
脳の中心部には、左右の内頸動脈と脳底動脈がつながる「ウィリス動脈輪」という血管の輪があります。この部分の血管が少しずつ狭くなり、代わりに周囲の細い血管が新しく張りめぐらされるようになります。この異常な血管網が画像検査で“もやもや”と見えることから、「もやもや病」という名前がつけられました。
進行すると、脳に十分な血液が届かなくなったり、もろくなった血管が破れて出血を起こすことがあります。発症は**小児期と成人期に二峰性(にほうせい)**を示すのが特徴です。子どもでは脳梗塞や一過性脳虚血発作(TIA)を繰り返し、成人では脳出血を起こすことが多いとされています。

もやもや病の原因

もやもや病の原因もやもや病の正確な原因はまだ完全には解明されていません。
しかし、遺伝的な要因が関係していることが知られています。特に、日本人や東アジアに多く見られることから、体質や遺伝子(RNF213遺伝子)の関与が指摘されています。
その他の考えられる要因としては、自己免疫反応や炎症、環境因子なども挙げられていますが、現時点でははっきりした因果関係はわかっていません。
また、ご家族に同じ疾患を持つ方がいる場合、発症リスクが高くなることが報告されており、家族性もやもや病として定期的な検査が推奨されます。

もやもや病の症状

もやもや病の症状は、脳への血流が不足することで起こる虚血症状と、血管が破れて起こる出血症状に大きく分けられます。

小児に多い虚血型

子どもの場合、脳への血流が一時的に減少することで、次のような症状が起こります。

  • 手足の脱力やしびれ(片側または両側)
  • 顔の動きに違和感がある
  • ろれつが回らない、言葉が出にくい
  • けいれん発作
  • 一時的に意識を失う
  • 運動や泣く・笛を吹くなどの呼吸が荒くなる動作で症状が誘発される

これらの発作は数分で回復することもありますが、繰り返すうちに脳梗塞を起こす危険性があります。

成人に多い出血型

成人では、もろくなった異常血管が破れることで、くも膜下出血や脳内出血を起こすことがあります。

成人に多い出血型

  • 突然の激しい頭痛
  • 吐き気・嘔吐
  • 意識がもうろうとする
  • 手足のまひや言語障害

症状の出方は出血部位によって異なりますが、突然発症し重症化するケースが多いため、救急対応が必要です。

もやもや病の検査・診断

もやもや病が疑われた場合、脳の血管の状態を詳しく調べる検査が行われます。

MRI・MRA(磁気共鳴血管撮影)

MRI・MRA(磁気共鳴血管撮影)脳の血流の流れや異常な血管網(もやもや血管)の有無を確認します。被ばくがなく、繰り返し検査が可能です。

脳血管造影検査(DSA)

造影剤を使って脳の血管を詳細に描き出す検査で、診断の決め手となります。血管の狭窄やもやもや状の側副血行を直接確認できます。

CT・SPECT(脳血流シンチグラフィ)

脳のどの部分で血流が不足しているか、機能的な評価を行うために使用されます。

遺伝子検査(RNF213など)

家族性が疑われる場合に実施されることがあります。

診断は、日本脳神経外科学会の診断基準に基づき、両側性の内頸動脈終末部または中大脳動脈の狭窄と、もやもや血管の存在を確認することで確定されます。

小児慢性特定疾患・指定難病について

もやもや病は、小児慢性特定疾病および指定難病(指定番号22)に認定されている疾患です。
そのため、診断を受けた方は、医療費助成制度を利用できる場合があります。

  • 小児(18歳未満)であれば「小児慢性特定疾病医療費助成制度」
  • 成人であれば「難病医療費助成制度」

これらの制度を利用することで、医療費の自己負担を軽減し、長期的な治療や検査を安心して継続することが可能です。
助成を受けるためには、指定医による診断書と自治体への申請が必要になります。詳細は各自治体の保健センターなどで確認できます。

もやもや病の治療法

もやもや病の治療は、脳の血流を保つことと発作や出血を防ぐことが目的です。

薬物療法

血液の流れを良くするため、抗血小板薬(アスピリンなど)を使用することがあります。
ただし、薬だけで病気の進行を止めることは難しく、根本的な治療には手術(血行再建術)が検討されます。

手術療法(血行再建術)

脳に新しい血流の通り道をつくることで、虚血や出血を防ぎます。主な方法は以下の2つです。

直接バイパス術

頭皮の動脈(浅側頭動脈)を脳の血管に直接つなぎ、血液を流す方法。

間接バイパス術

筋肉や膜などの血管を脳表面に移植し、時間をかけて新しい血管を育てる方法。

年齢や症状、血管の状態によって適切な術式が選ばれます。
特に小児では間接バイパスが多く、成人では直接・間接を組み合わせた手術が行われることもあります。

リハビリテーション・生活管理

手術後は、脳血流が安定するまで経過観察を行い、再発予防のために血圧や体調管理が必要です。
過度な運動や息を止めるような動作(笛を吹く、強く泣くなど)は血流変化を起こしやすいため注意が必要です。

よくある質問(Q&A)

もやもや病は治りますか?

現在のところ、もやもや病を完全に治す薬は存在しません。
しかし、手術(血行再建術)によって脳への血流を改善することで、症状の再発や脳梗塞・脳出血のリスクを大幅に減らすことができます。
つまり、「治す」というよりも「進行を抑え、安定した状態を保つこと」が治療の目的になります。
早期に診断を受け、適切な時期に手術を行うことで、日常生活を支障なく送ることも十分可能です。

もやもや病の生存率は?

適切な治療を受けた場合、長期的な生存率は高く、80〜90%以上の方が安定した経過を保っています。
特に手術後に脳への血流が確保されると、再発リスクが下がり、再出血の危険性も低下します。
ただし、手術を行わずに経過をみる場合や、再発を繰り返す場合には予後が悪化することがあります。
定期的なMRIやMRAによるフォローアップが生存率の維持に直結するといえます。

もやもや病の進行速度は?

もやもや病の進行速度には個人差があります。
数年間ほとんど変化しない方もいれば、数か月単位で血流が悪化する方もいます。
特に小児では血流の変化が急で、一時的な発作(手足の脱力や言葉のもつれ)を繰り返すことがあります。
成人では、徐々に血管の狭窄が進行し、脳出血を起こすリスクが高まります。
このため、「症状が落ち着いているから大丈夫」と思わず、定期的な画像検査による経過観察が欠かせません。

もやもや病を放っておくとどうなる?

もやもや病を治療せずに放置すると、脳への血流がさらに低下し、脳梗塞や脳出血を起こす危険性が高まります。
小児では発作を繰り返すうちに脳の発達に影響を及ぼすこともあり、成人では一度の出血で重い後遺症を残すこともあります。
また、もやもや血管(側副血行路)は非常にもろいため、時間の経過とともに破れやすくなります。
そのため、症状が軽くても放置せず、早期に脳神経外科での治療方針を相談することが大切です。

もやもや病になったらしてはいけないことは?

もやもや病では、脳への血流が一時的に低下すると発作が起こりやすいため、過度に息を止めたり、急に力む行為は避けましょう。
例えば、笛を吹く・風船を膨らませる・激しい運動・強く泣く(小児)などは一時的に脳の血流を減らすことがあります。
また、急激な温度変化や脱水も血流を不安定にするため、水分をこまめに摂り、体調管理を整えることが重要です。
医師の指示のもと、無理のない範囲で日常生活を送ることが再発予防につながります。

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