椎骨動脈解離
(ついこつどうみゃくかいり)

椎骨動脈解離とは

椎骨動脈解離とは椎骨動脈解離とは、脳へ血液を送る主要な血管のひとつである椎骨動脈の内壁が裂け、血管壁の間に血液が入り込む状態を指します。
この裂けた部分(解離部)に血液がたまり、血管が狭くなったり、ふくらんだりすることで、脳梗塞やくも膜下出血などを引き起こすことがあります。
椎骨動脈は、首の骨(頸椎)の中を通って脳の後方に血液を送る大切な血管です。
このため、解離が起こると後頭部の痛み・めまい・ふらつき・視覚異常などが生じることがあります。

比較的若い世代にも発症しやすく、突然の首や後頭部の強い痛みが最初のサインとなることが多い疾患です。

椎骨動脈解離の原因・早期発見について

椎骨動脈解離の原因は、外傷によるものと明らかな外傷がない特発性のものに分けられます。

外傷によるもの

外傷によるもの交通事故や転倒、スポーツなどで首に強い衝撃が加わった際に発症することがあります。
特に、ゴルフ・テニス・柔道・ラグビーなど首をひねる動作を伴う運動で起こりやすく、整体やマッサージなどで強く首を回したあとに発症するケースも報告されています。

特発性(自然発症)

外傷がなくても、軽い動作や血管の弱さがきっかけで発症することがあります。
たとえば、

特発性(自然発症)

  • 激しい咳やくしゃみ
  • 排便時のいきみ
  • 高血圧による血管への負担
  • 結合組織疾患など、生まれつき動脈壁が弱い体質

また、性行為・運動・強いストレスなども血圧や自律神経の急激な変化を起こし、解離を誘発する要因になることがあります。

早期発見のポイント

早期発見には、「痛みの特徴に気づくこと」が重要です。
特に、

  • 首や後頭部の片側が急に痛くなる
  • 痛みが数日続く
  • 痛みに加えてふらつき・めまいがある

といった場合は、解離による血流障害が始まっている可能性があります。
早めに脳神経外科や脳神経内科を受診することで、重症化を防げるケースも多くあります。

椎骨動脈解離の症状

最初に現れることが多いのは、片側の後頭部や首の強い痛みです。
この痛みは“ズキズキする”“刺すような痛み”“締めつけられるような痛み”など、表現はさまざまですが、これまでに経験したことのないような強い痛みが特徴です。

その後、血流障害が進むと、次のような神経症状を伴うことがあります。

めまいとは

  • めまい・ふらつき
  • 視界のかすみ、物が二重に見える(複視)
  • しゃべりにくい、呂律が回らない
  • 片側の手足のしびれや脱力
  • 意識の低下やけいれん

初期の段階では「痛みだけ」で済むこともありますが、数時間〜数日後に脳梗塞を起こすことがあるため注意が必要です。
また、血管が破裂した場合にはくも膜下出血を発症し、生命に関わることもあります。

椎骨動脈解離の検査・診断

診断には、画像検査による血管の状態の確認が欠かせません。

MRI・MRA検査

MRI・MRA検査MRIは脳や血管の断面を細かく映し出すことができ、血管壁の血腫や脳梗塞の有無を確認できます。
MRA(磁気共鳴血管撮影)では、血流が途絶えている部分や狭窄している血管が描出され、解離の特徴的な所見が確認されます。

CT・CTアンギオグラフィー

CT・CTアンギオグラフィー緊急時に迅速に血管の走行を確認するために用いられます。
出血の有無や動脈瘤の形成を評価するのにも有効です。

脳血管撮影(DSA)

必要に応じて実施される検査で、造影剤を注入して血管の詳細な形を観察します。
血管の裂け目や血流の滞りを正確に確認できるため、治療方針の決定に役立ちます。
診断の際には、可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS)や動脈瘤、動脈硬化などの疾患と区別することも重要です。

椎骨動脈解離の治療・予防

治療は、解離の範囲・症状・出血の有無に応じて選択されます。

安静・保存的治療

出血を伴わない場合や軽症例では、安静を保つことが第一の治療です。
ベッド上安静とともに、血圧のコントロールを行い、自然な血管修復を待ちます。
また、血栓ができて脳梗塞を起こすのを防ぐために、抗血小板薬や抗凝固薬を用いることがあります。
ただし、くも膜下出血を起こしている場合は出血リスクが高いため、これらの薬は使いません。

血管内治療・外科的治療

血管が再解離を繰り返す場合や、破裂の危険が高い場合には、血管内ステント留置などの治療を行うことがあります。
ステントで裂け目を支えることで血流を安定させ、再発を防ぎます。

生活上の予防と再発防止

治療後も、血管に過度な負担をかけない生活を心がけることが大切です。

  • 首を急にひねる・強く回す動作を避ける
  • 重い荷物を持たない
  • 咳やくしゃみを無理に我慢しない
  • 十分な睡眠とストレスの軽減
  • 定期的な血圧チェック

特に治療後1〜2か月は、運動や入浴を控え、体をゆっくり慣らしていくことが再発予防につながります。

よくある質問(Q&A)

椎骨動脈解離は自然に治ることがありますか?

はい。出血を伴わない軽症例では、自然治癒することも少なくありません。
血管の裂け目が小さい場合、安静にして血圧を安定させることで、数週間から数か月のうちに自然に修復されます。
そのため、早期に発見して安静を守ることがとても重要です。

椎骨動脈解離はどんな人に多いですか?

日本では、30〜50代の比較的若い世代の方にも発症が見られます。
特に、高血圧や喫煙、ストレス、過労などで血管に負担がかかっている方、またはスポーツやマッサージなどで首をひねる機会が多い方は注意が必要です。
お笑い芸人の千鳥のノブさんもこの疾患で入院されたことが報じられ、突然起こる疾患であることが広く知られるようになりました。

補足:芸能人の例で注目された理由
千鳥のノブさんが2021年に「椎骨動脈解離による入院」を公表したことは、
この疾患の存在を世間に広く知らしめるきっかけとなりました。
見た目は健康でも、突然発症することがあるため、「首の痛みを甘く見ない」ことの大切さが改めて注目されています。

椎骨動脈解離は再発することがありますか?

多くの方は一度の発症で治癒しますが、まれに再発するケースもあります。
再発を防ぐためには、血圧管理、禁煙、十分な睡眠、ストレスの軽減などが大切です。
また、首を強く回す、うつ伏せで寝る、無理な筋トレを行うなど、首に過度な負担をかける動作を避けることも予防につながります。

椎骨動脈解離は仕事や運動をいつ再開してよいですか?

回復までの期間は個人差がありますが、安静治療後に症状が落ち着いてから少なくとも2〜4週間程度は無理をせず休養することが推奨されます。
医師の判断で血管の状態が安定していれば、デスクワークなどの軽作業から再開できます。
運動はウォーキングなど軽いものから始め、首に負担をかけるスポーツやトレーニングは医師の許可を得てから再開しましょう。

椎骨動脈解離はストレスが関係しますか?

はい。精神的ストレスは自律神経のバランスを乱し、血管の収縮や血圧変動を引き起こす要因になると考えられています。
特に、過労・睡眠不足・強い緊張状態が続くと発症リスクが高まります。
リラックスできる時間を意識的に作り、ストレスをためすぎない生活が再発予防にも役立ちます。

椎骨動脈解離の後遺症は残りますか?

軽症で早期に治療を受けた場合、多くは後遺症を残さず回復します。
しかし、脳梗塞やくも膜下出血を合併した場合には、手足のしびれ・ふらつき・構音障害などの後遺症が残ることもあります。
発症から早い段階で治療を受けることで、後遺症のリスクを大幅に減らすことができます。

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